2019年10月18日金曜日

人権と自治を第一に考える京都市長を


 19号台風は私の生涯でもっとも広域被害をもたらしました。狩野川台風も第二室戸台風も知っていますが、これほどまでに広域に水害をもたらした台風はありませんでした。海水温が2度も高くなっていた海面から供給される力によって途方もない台風に発達したと言われています。こんなに多くの都道府県で被害がでるとは、直接的な被害者ではない者も呆然としております。地球温暖化のなせる作用だと解説されており、全部といわずとも、大いに関係があるのだろうと思います。我々人間のなせる行為の結果であることは間違いないでしょう。国家的、国際的に対処していかなければならないことだけは誰しもが認めるところだと思います。直ちに国家的とか国際的などというレベルでなしうることは少ないでしょう。しかし、自分が住んでいる地域、地方での活動は今すぐにでもできることがあるだろうと思います。また、災害対策、被災者対策はまさにすぐやらなければならないことであり、私たちができることだと思います。この場にお集りの方々に、今更このようなことを申し上げるのは、まさに釈迦に説法と言われるでしょうが、今まで以上に市民運動、住民運動をもう一歩でも力強く前に進まなければならない事態に我々は遭遇しているのです。
 私たちにとって、すぐに議論し、活動できる場がいま住んでいる町内であり、行政区であり、自治体です。国家までは道のりは遠いでしょうが、地方自治体に対してなら、構成メンバーである我々一人ずつが動くことは簡単です。なぜなら、自治体とは国家の都合を実行するだけのものではないのです。構成員が考え、議論し、実践する範囲であり、まさに最小の単位であるからです。地方自治体は地域住民の組織であり、決して国家にすべて支配され、差配される存在ではないはずです。しかし、現在の京都市はそのようなものでしょうか。地球温暖化に抗するのは地球規模的行動だけではないでしょう。国際的だけも、国家的だけでもないと思います。地方であり、地域での活動が積み重なって国家的にならなければ根本からの対策とはならないでしょう。そんな考えとまでは行かなくても、そんな気分だけでも持ち続ければ、我々の活動で国際的なレベルでの対策を構築できると思います。すなわち、もっとも重要なことは「自治」というものを我々市民がもっと深く考え、すこしでも行動することです。
 来年の2月2日が京都市長を選出する投票日に決定されたようです。京都市は大きな曲がり角に立っています。自治体とはなにか、この京都で自治を守るためにはどのようにすればよいのかを市民が問われる瞬間が来るのです。地球規模の環境問題でも、ある地域での環境問題に対しても我々が自治の概念をしっかりと捕まえ行動すればよいのです。
 このような活動の基は人権を守ること、その意識を高めることではないでしょうか。人権を軽んじ、踏みにじる行動はいかなる活動目的といえども許されるものではありません。この1年間に亘って議論され、反対行動が続けられた、「18歳と22歳の市民の宛名シールを自衛隊に渡す」政策は京都市/市長の一存で決定され、実施され、当事者の若者さえ知らないうちに、彼らの宛名シールが自衛隊に渡されてしまいました。市民からこの政策を批判され、まともに反論できなかった京都市は、渡す直前の少しの期間だけ、自衛隊に宛名シールを渡されたくない者は連絡すれば、削除し、渡さないことにすると決めました。いかにも人権を守っているかのような言い草でした。もし、反対行動がなければ、当事者の若者もまったく知らないままに自衛隊に差し出されたのです。しかし、このような自衛隊に差し出す名簿から削除するという方針は京都市のホームページに掲載されただけであり、当事者の若者の何%がホームページを見たと思っているのでしょうか。各戸配布の市民新聞に掲載するなどの措置を講ずるべきであるとの市民の要求にはまったく耳を貸しませんでした。この件を審議した「京都市情報公開・個人情報保護審議会」に審議内容を問い合わせたところ、「個人情報取扱事務に関し、新たに個人情報の電子計算機処理をしようとするときは、あらかじめ審議会の意見を聴かなければならないと定める条例第10条第2項の規定に基づき、行われたもの」であり、自衛隊に提供する情報をいかに上手にコンピューター技術で処理するかという技術的問題を審議したのであって、個人情報保護や人権擁護の観点からの審議などしていないと審議会の会長が回答して来ました。数名の若者が情報提供から除くようにと要求し、実現しましたが、ほとんどの若者の個人情報は、本人が提供されたことも、提供を拒めることも知らされないままに提供されてしまったのです。
 地方自治体が果すべき役割は大事な問題を市民の生活の場、生活の地域で議論し解決することでしょう。そして、その自治体の長である市長は選挙では特定の党派や組織団体から支援をうけるでしょうが、当選すればそれらの支援団体の者でなく、自治体内(京都市内)のすべての人々の生活を守る立場であり、役職であることを肝に銘じて職務を遂行しなければならない存在です。その活動の基本は人権を守ることであり、自治体の長として国家とも対峙しなければならないときは対峙することが求められる存在であります。自治体というものは、国家の下部組織ではないと肝に銘じて行動することから生まれるものです。宛名シール提供事件はこれらの原則をないがしろにした行為であり、許されるものではない。自治体の長が自治と人権を踏みにじり、破壊したのです。
 宛名シール事件以外にも多くの見逃すことができない問題が京都市内には存在しています。今日のこの集会で短い時間ですが、京都市という自治体が抱えている大事な問題を多くの方々が伝えてくださいます。それらの課題をいかにして自治体として解決していくのかを考え、自治と人権とはなんぞやを考え続け、市民と語り続ける人物を市長選挙では選ばないと、この街も147万人市民もますます苦難の道を歩むことになると思います。
 この50年間、多くの公害現場に出向き、被害者とともに調査活動してきました私にとって、自治と人権を守ることが公害問題を解決する基本だと知りました。このような思いから、今回の市長選挙を京都市民社会にとってきわめて重要なポイントだと思い、この「こんな京都にしたいな」運動に参加しています。
  以上は2019年10月16日のみやこめっせでの集会で話したことです。

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